デザインは遅効薬なのでプライドを持って取り組めば良い

デザイン

Webサービスのデザインの改善施策には成果が出やすいもの・出にくいもの、様々あります。もちろん即効薬もあるでしょう。しかしその多くは遅効薬だと考えています。小さな改善を積み重ねていった時に、気付いたら大きな成果になっていた。そんなこともよくあります。短期的な結果に一喜一憂せずにコツコツやるのが一番です。

デザインの成果と数字

大規模Webサービスの運用に何年も携わる身としても、デザインだけを変えてすぐKPIに好影響があったという経験は数えるほどです。もちろん数パーセントの影響があるような地道な改善の経験は山ほどあります。数十パーセントのインパクトを与える改善ができたら御の字。それくらい難しいことだと思います。

だから、もしあなたがWebサービスのとあるデザイン改善施策を担当して、その結果がなかなか数字に現れなかったとしてもすぐに落ち込む必要はありません。

経験的に、これまで数字に影響を与えた施策は、いつもデザイン以外の好材料が揃っていたときのように思います。企画が良かったからとか、プロモーションが噛み合ったからとか、市場環境が良かったからとか、そういうものです。このようなWebサービスの成長に寄与するような周辺環境は数えればきりがありません。高品質なデザインとこれら周辺環境が調和した時に目にわかるような成果があらわれやすかったと思います。

デザインの力でWebサービスを伸ばしていく。言うは易し行うは難しです。もちろんデザインが良いからこの製品を選んだ、というお客さんの声がたくさん届くサービスもあるでしょう。でも、やはりWebサービスにとってデザインは、それを成す一部でしかありません。

チームのアウトプット

では、どのようにそうした周辺環境を得るのでしょうか。ひとつに開発チーム内でのクリエイティビティが最大化するような行動ができるでしょう。

企画に厚みを持たせるのはどうでしょうか。ユーザーが本当に求めているものを見抜く精度を高めるとか、ありそうでなかった施策を探すのです。あるいは、マーケティングチームと協力して、リリース後の盛り上がりを設計するのはどうでしょう。エンドユーザーとしっかりとコミュニケーションをする。Webサービス内での活動を後押しする。ちょっとの工夫で施策の成功確率を高められます。

もし大きく影響を与える施策をリリースできたとしても、これはデザインの成果だ、なんて鼻高らかには言えません。ビジュアルの側面が優れていると、そのように言ってくださる方はいますが、そうはいってもみんなでつくってるものは、やっぱりみんなの成果です。

でも、すこしくらいは喜んでもよいと思います。だって、優れたデザインがなかったらうまくいっていないかもしれないからです。

感性的な成果

デザインの結果がわかりやすい数字として表れてこなくても、優れたデザインは見た人の心のうちにかならず響いているだろうと思います。人はたとえ言葉にしなくても、あるいは具体的な行動に表れなくても、そのイメージ、印象、体験、使い心地など、すこしずつ心に留めて、その製品やサービスへの愛着を育んでいるだろうと思うからです。

最近見たブランドのデザインを思い出してみてください。あのデザインは好きだなあ、良かったなあといい気分になりませんか。それには具体的な行動に表れていなくても、ポジティブな関係性がそこに感じられるはずです。

こんなものは精神論でなんの根拠もないじゃないかと言われたら、何も言い返せないのですが、でもそういうふうに、自分のデザインの仕事をとらえると、ああなんだか失敗しちゃったかなーなんて思って落ち込むことも少なくなるのではないでしょうか。

ユーザーからのネガティブなコメントが届いていなかったり、数字が落ちていないのなら、それは手を加えた分だけプラスになっています。

プライドを持ってコツコツ真面目に

こんなふうに考えたら、即効性のあるデザインだけが良いデザインだとは思いません。手を加えた分だけ確かに良くなっているはず。そんなふうにデザイナーとしてのプライドを持って立ち向かったら、遅効薬としてのデザインも良いものですよ。むしろそういう細かな気配りにこそ神は宿るものです。小さな積み重ねで信頼を勝ち取っていくのもまたデザインでしょう。

もちろん成果に貢献できるデザインを提供できることはプロとしての証です。でも数字に現れない結果もまたプロの成果です。

この記事を書いた人

村田 智 @murata_s
アートディレクター/デザイナー
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デザイン
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  • デザインの考え方
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