『働く人のためのキャリアデザイン』(金井壽宏)を読んだ
ちょうど自分のキャリアをどうしていこうか考えていたので『働く人のためのキャリアデザイン』をKindleで読んだ。
キャリアについて、トータルで何十年も働くつもりなら、誰にとってもキャリアという軌跡が存在するという。決してキャリアアップだけがキャリアではなく、自分に向いている仕事を選ぶのもまたキャリアである。
四つ辻に立った時にどうやってこの先の選択をするのか。それは人それぞれだから、それぞれが答えを見つけるほかない。とはいえなんらかのガイドがあることに越したことはないだろう。その思考を助けてくれる、いくつかの視点を授けてくれるのが本書だ。
著者はキャリアの定義を5つ挙げながらも、
せめて節目と感じるときだけは、キャリアの問題を真剣に考えてデザインしたい(中略)節目さえしっかりデザインすれば、あとは流されるのも、可能性の幅をかえって広げてくれるので、OKだろう。
という立場をとっている。
また、節目だけはデザインすべきという本書のキャリア・デザイン論の基本的アイデアについて、トランジション(移行期)という考え方が重要であるという。
キャリアは、安定期(流されてドリフト状態でも大丈夫な時期)と移行期(しばしば危機でもある節目)の繰り返し
我が身をふり返ってみても、たしかにキャリアについて悩んでいる時期と悩んでいない時期とが交互に訪れていたことに気づく。それに、これでしばらくいこうと目標が決まったとき(本書の文脈でいうデザインしたとき)、安定期に向かって、思うがままに仕事に取り組んでいたように感じられる。
節目だけはデザインする。これを意識してみようと思った。
生涯キャリア発達課題
本書のキャリア・デザイン論の基本的なコンセプトに共感したところで、次に面白いと思ったのが、生涯の節目ごとの発達課題に関する内容だ。なぜなら、キャリアについて、20年、30年というスパンでキャリアを考えたことがなかったからである。
自分のこれまでのキャリアから想像できる未来の姿はせいぜい数年先までだ。自分はいまデザイナーとして暮らしているので、10年先もきっとデザインの仕事をしているだろうとは思ってはいるけど、どんなデザインに携わっているかはまったく想像ができない。もしかしたらデザインの仕事をしていない未来だってあるのかもしれない。
一般的に歳を重ねるとどのような発達課題に直面し、それを乗り越えるとどのような価値を獲得してくのかについての記述は参考になる。ボリュームも多いのでざっと箇条書きでメモしておきたい。
- ヤング
- G・シーイーによると「なんでもいろいろ試してみる二十代」
- 望みや抱負をどのように現実に移せそうか。どのようにキャリアを深く掘り進むのがベストか。どこに行こうとしているのか。誰が自分の助けになってくれそうか
- ミドル
- エリクソンによると「生殖性もしくは世代性」。対立項のバランスやハーモニーが発達課題になる
- B・ニューガーテン、野田正彰ともに自然に人生の逆算ができるのが大事という
- レビンソンによる4つの発達課題にどう折り合いをつけるか:若さと老い、男らしさと女らしさ、破壊と創造、愛着と分離
- シニア
- 自分の歩みを肯定できるか
- 究極の統合とアイデンティティのさらなる確立
わたしが歳を重ねてこのような発達課題に直面したとき、これまでの価値観とのすり合わせがうまくできるのだろうかという不安はすこしある。しかしわたしが30歳前後になってから仕事に対する価値観が若い頃と変わっていることを知っているし、その時、ここでいうような課題に向き合っていたんだなと思うと、たぶんこれからもなんとか受け入れていくのだろうと思った。
この本はまた折に触れて読みかえすことになるだろう。本には効くタイミングと効かないタイミングがあるとよくいうが、まさによく効くタイミングだったと思う。再びトランジション期が巡ってきたとき、本書をまた手に取りたいものだ。